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  • キョクチョー

はじめての夜神楽★徹底解説スペシャル(2)


②三十三番の舞がある

そんなアメノウズメノミコトの舞から始まったとされる「神楽」は 平安中期に様式が完成し、現代に至るまで日本各地で舞い継がれてきた。 高千穂地域では三十三番という形で主に33種類の舞が受け継がれており、 それを一晩かけて舞いとおすのが夜神楽なのである。 直会(なおらい)などの儀式を挟むが、12時間くらい舞いっぱなしである。 舞にはそれぞれ込められた意味合いや祈願がある。 祈願の内容に合わせてゆかりのある神様が降臨し、舞人と共に舞い遊ぶ。 ここでいくつか、舞をご紹介しよう。

【杉登】 <神様>椎根津彦命・宇佐津彦命・入鬼神 里でお祀りしている氏神が里人と喜びを分かち合い 別れを惜しみつつ再び昇神する神楽 氏神(入鬼神)は杜の象徴で依代でもあるご神木の杉を伝って降臨する。 ※「神下し」「鎮守」と合わせて“式三番”と呼ばれ、夜神楽の序盤で奉納される。 氏神の降臨・祝福・昇神という高千穂の神楽の神髄を見られる重要な舞。

【地固め】 <神様>天児屋根命・太玉命・事代主神・五十猛神 耕地を讃え護る、国土安泰祈願の神楽。水神信仰とゆかりが深い 舞人は太刀、鈴、扇、榊を持ち、女性の帯をたすき掛けにして舞う。 ※水神系の神楽では太刀が使われることが多い。

【五穀】 <神様>倉稲魂命・保食神・大己貴命・太田命・大宮売命 「稲・麦・粟・稗・豆」または「稲・麦・豆・大豆・小豆」の五穀を 大地にまき、今年の収穫を感謝し、来春の豊作を祈る神楽。 写真の舞人が左手に持つお膳に五穀が入っている。

【鈿女】 <神様>天鈿女命 岩戸隠れのストーリーに沿って舞われる「岩戸五番」呼ばれる神楽のひとつ。 夜明け近くに舞われ、手力雄神による戸取へと続く夜神楽のハイライト。 古事記の記述とは違い、高千穂のウズメさんは優雅に舞う。 上記の「鈿女」のように一柱の神様だけが登場する神楽もあるが、 基本的には一つの舞にたくさんの神様が招かれる。 記述されているだけでも80近い神様が招かれており 言うなれば八百万の神々をお招きして一緒に舞っちゃっているわけである。 そう思って夜神楽の舞台を見ると、押すな押すなの大盛況が見えるようで楽しくなる。

③各集落ごとに祀っている神社を中心として奉納される

突然だが、「高千穂の夜神楽」は国の重要無形民俗文化財の指定を受けている。 「高千穂の夜神楽」であって「高千穂神楽」ではないのには訳がある。 ここで、冬季に高千穂町内で行われている、夜神楽の実施地図を見てみよう。

主なものだけで全20集落。町内各地で行われる夜神楽の嵐。 密度が濃くて地図が作り難いくらいである。 これらは今の市町村単位で言えば高千穂町で行われているので 「高千穂神楽」と総称されがちだが、実際には 高千穂神楽・岩戸神楽・上野神楽・河内神楽・浅ヶ部神楽・秋元神楽・野方野神楽などなど その集落名を冠した名前が正式名称。 それを便宜上まとめる際に使用したのが「高千穂の夜神楽」というわけである。 「高千穂(地域)の(様々な集落で舞われている)夜神楽」である。 まーそんな細かいことはいいじゃないかと言うなかれ。 実際、地区によって舞の中身も順番も登場する神様も違うことがある。 「こういう説明を受けて行ったのに全然違った!」とならないために 知っておいてほしい豆知識なのである。 もともとは、里の氏神様を中心に里の村人の安泰を祈って行う村まつりである。 それぞれに風習があり、しきたりがある。 最近は観光の方も増えているが、神楽は芝居や演劇ではない。 集落ごとの違いを楽しみ、その集落に溶け込む気持ちで参加していただきたい。

④秋の収穫を感謝し、春の豊作を祈願する祭りである

神楽の本質は「感謝」であり「祈り」である、ということかと思う。 自然を相手にしては、人間にはどうしようもないことがいくつもある。 それは災害だったり生き死にだったりする。 高千穂の人々が、そんな厳しい山の暮らしの中で それをつかさどる山の神、田の神をはじめとした神霊を 畏れと親しみを込めて祀ってきた神事が夜神楽なのである。 その日限りの参加でも、参列者として敬意を払い、共に祈りたいものである。 また同時に、村人たちが日頃の労をねぎらいあい、羽を伸ばす村まつりでもある。 神楽を舞う舞人も普段は普通のおじちゃんやにいちゃんである。 昨日酒場で飲んだくれて阿呆なことを言っていたおじちゃんが 神楽の晩にはびしっと舞い上げる。 間違ったら仲間からやんややんやと言われるときもある。 まさに神と一体となり空気が変わる瞬間もある。

「五穀」の舞のフィナーレを飾る一人舞。熟練者の役目。 神聖な儀式と村まつりの気安さが行ったり来たりして忙しい。 初めて参加する人はその独特の空気感をぜひ楽しんでほしいと思う。

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